サッカーだけでは伝えきれないこと
「田植えやるぞ!」
その一言から、すべてが始まりました。
少年サッカーの現場ではあまり聞かないこのフレーズ、言い出したのは小松北FCの新しい代表。
これまでサッカー一筋だったクラブが、40周年を迎える節目で“新しい風”を取り入れようとしていたのです。
小松北FCで育ててもらい。
指導を始めて今年で29年。私・村上昌洋も最初は正直驚きました。「なんで田植え?」と思ったのが正直なところ。でもその背景には、“サッカー以外のことも子どもたちに経験させたい”という代表の強い想いがありました。
そしていま、振り返ってみると、その挑戦はサッカーでは得られない“深い学び”を子どもたちに与えてくれたと感じています。
はじめての泥んこ体験、子どもたちの心に芽生えたもの
田植え当日、最初はみんなおっかなびっくり。
普段はスパイクでグラウンドを駆け回っている子どもたちが、裸足でぬかるみに足を踏み入れるのですから当然です。ぬるっとした感触に「うわっ!」と声をあげる子もいれば、転んで泥だらけになる子も。それでも徐々に笑顔が増えていきました。
「お米ってこうやって作るんだ…」
手に泥をつけ、一株一株、丁寧に植えていくうちに、自然と真剣な表情に。
教室では学べない“実体験”が、子どもたちの心にしっかりと届いているのがわかりました。
さらに、「最近、米が足りないってニュースでやってた!」と話す子もいて、社会とのつながりを感じるきっかけにもなっていました。
田植えがくれた、本当の“チームプレー”とは
作業が終わったあとの子どもたちの表情は、サッカーの試合後とはまた違う、達成感に満ちたものでした。
「お米って、すげぇ大変だね…」
「農家の人って、毎日こうやってるんや…」
「残さずご飯食べよって思った」
そんな声が自然にこぼれ、ひとりひとりが“気づき”を手にしているのが感じられました。
これは、ただの食育ではありませんでした。
チームで一緒に泥まみれになって、一緒に汗をかいて、協力しながらひとつの作業をやり切る——そこにはサッカーと共通する“本当のチームプレー”があったのです。
サッカーの技術や戦術だけじゃなく、仲間との絆や、社会への感謝、自然とのつながり。田植えという非日常が、子どもたちに“人としての成長”を与えてくれたのだと思います。
サッカーしかしてこなかったクラブが、田んぼへ飛び出した。
それは単なる記念イベントではなく、未来の子どもたちに必要な“心の栄養”だったのかもしれません。
これからも、子どもたちにとって「楽しいサッカー」であり続けると同時に、「大切なことを学べる場所」でありたい。そんな想いを胸に、指導者として私もまだまだ一緒に走り続けます。
来年が泥んこサッカー大会だ!!

やっちゃったー!

ビフォー

アフター
自分も真面目に植えてます、教え子と並んで(今はお父さん監督ですが笑)